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エリプソメトリーの原理

​※本編は、以下リンク(以後、前編、前前編と呼ぶ)からの続きであり、本編中に示す式の(1)~(12)は前編、前前編の式を指すものとする。

​前前編:

​前編:

ここまで、スネルの法則とフレネルの公式を複素数に拡張することで、吸収のある媒質へこれらの適用範囲を広げてきた。この原理を応用することで、薄膜の膜厚測定や、光学定数(屈折率、消衰係数など)、組成比、表面粗さ、結晶性など評価が可能になる。これを実現する分析技術のエリプソメトリーについて、基本原理の導出を示す。

​・エリプソメトリーの定義式の導出

最初に、前編で用いた以下の値の範囲について調べる。

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前編 (11)-②より、

電磁波に関する様々な公式の導出(吸収体)_092.png

n2 > n1 とすると、

電磁波に関する様々な公式の導出(吸収体)_103.png

よって、前編 (11)-①-3 より、

電磁波に関する様々な公式の導出(吸収体)_104.png

また、前編 (11)-①-3 と (13)-②-1 より、

電磁波に関する様々な公式の導出(吸収体)_172.png

​(13)-②-1,2,3 と、ξi < 0 (∵前編 (11)-③-5) を踏まえ、n2 > n1 のとき、前編 (12)-②-1と(12)-③-1は振幅と偏角を用いて以下のように表すことができる。

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電磁波に関する様々な公式の導出(吸収体)_144.png

ここで、式中の青色の箇所は、θ+ξrの値がπ/2未満のときは零、π/2より大きいときは-πになるような場合分けを式中に組み入れたものである。

また、ξr と ξi前編 (11)-③-5,7, (11)-④-5,7 のθの関数で与えられる。

​この結果を適用することで、エリプソメトリーで定義されるフレネル振幅反射係数比ρは、位相差Δと振幅比角ψ(これらをエリプソメトリーパラメータと呼ぶ)を用いて、以下のように表される。

電磁波に関する様々な公式の導出(吸収体)_191.png

但し、位相差Δの定義域を、0≤Δ≤2πとする。(13)-④-2の値がこれを外れた際には、2mπ(mは整数)を加算して定義域に入るようにmの値を選べばよい。

​例として、n=1.44, κ=5.23 のとき、θを変数として ψ, Δを計算すると以下のようになる。

電磁波に関する様々な公式の導出(吸収体)_112.png
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​・吸収がある媒質におけるp,s偏光の電界ベクトルの記述

​ここで、改めて電磁波の式について振り返る。入射光のp,s偏光の電界ベクトルをそれぞれEip, Eis、入射光のp,s偏光の電界振幅ベクトルをそれぞれEAip, EAis、入射光の波数ベクトルを ki としたとき、前前編 (2)-①より、これらの関係は以下のように表される。

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​ここで、入射光のp,s偏光の電界振幅ベクトルの単位ベクトルを以下のように定義する。

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このとき、(13)-⑤-1,2は以下のように書き換わる。

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同様に、反射光のp,s偏光の電界ベクトルをそれぞれErp, Ers、反射光のp,s偏光の電界振幅ベクトルをそれぞれEArp, EArs、反射光の波数ベクトルを kr としたとき、前前編 (2)-①より、これらの関係は以下のように表される。

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​ここで、反射光のp,s偏光の電界振幅ベクトルの単位ベクトルを以下のように定義する。

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このとき、前編 (12)-②-3, (12)-③-3 より、(13)-⑧-1,2は以下のように書き換わる。

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​・エリプソメトリーにおけるp,s偏光の電界ベクトルの記述と図示

​ここで、エリプソメトリーにおいては、入射光を以下のように設定する。

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このとき、前編 (12)-②-3, (12)-③-3、(13)-④-1より、以下が成り立つ。

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(13)-⑦-1,2は、(13)-⑪を適用すると以下のように書き換わる。

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これは即ち、p軸(またはs軸)に対しπ/4(45°)だけ傾いた直線偏光である。この状態は、単色エリプソメトリーでは直線偏光のレーザを用いることで、また、分光エリプソメトリーでは白色光を偏光子に通すことで、実現できる。

また、(13)-⑩-1,2は、(13)-③の1,2 と (13)-④-2 と (13)-⑪ を適用すると、以下のように書き換わる。

電磁波に関する様々な公式の導出(吸収体)_193.png

よって、p偏光は時間軸で見た場合はs偏光に対しΔ/ω進んでいる。

以上を踏まえ、時間軸においてψとΔは以下のように図示できる。

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ここで、入射光の電界については、(13)-⑪の条件に加え、絶対値を1に規格化して示した。

このように、直線偏光の入射光に対し、反射で位相差Δが生じることで、反射光は一般的に楕円偏光となる。

Δの値に応じて偏光は下図のように変化する。Δ=0,πでは直線偏光で、それ以外では楕円偏光となるが、Δ=0,πの前後で右回りと左回りの向きが反転する。

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更に、(13)-⑭-1a,2a はそれぞれ、以下のように表すこともできる。

電磁波に関する様々な公式の導出(吸収体)_196.png

よって、p偏光は空間軸で見た場合はs偏光に対しΔ/kr遅れている。

以上を踏まえて、空間軸においてψとΔは以下のように図示できる。

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ここでも、入射光の電界については、(13)-⑪の条件に加え、絶対値を1に規格化して示した。

  • ​あとがき

物理学と光学では慣習により位相の符号が異なる。ここでは物理学の慣習に基づいて示しており、これの光学の分野との違いについては以下を参照のこと。

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