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電磁波に関する様々な公式の導出

​※数式の参照があちこち飛ぶので、参照先の数式を見たりするときは、複製した別ウインドウで見ることをお勧めします。

​ 電磁波に関する様々な公式を、以下の流れで体系的に導出をしていく。全体を流れで理解することをお勧めする。

  • パラメータの定義と関係式

電磁波の各パラメータを以下のように定義する。

各パラメータ間の関係は定義より以下のように表される。

次に、誘電率・透磁率について示す。

真空中の誘電率・透磁率は以下の定数である。

誘電率・透磁率と各パラメータの間には以下の関係がある。

ここで、非磁性の媒質では、透磁率については以下のように扱える。

この場合は、 (1)-③は以下のようになる。

ここで、角周波数には後に示す(3)-⑥の関係があり、最終的に(3)-⑦,⑧が導出される。これについては以下のリンクを参照のこと。

  • ​電磁波の数式表現

電磁波は、以下のように表すことができる(マクスウェルの方程式から導出された結果のみ示す)。

電界ベクトル:

磁界ベクトル:

電界と磁界の関係は以下で表される。

ここで、各ベクトルは以下で定義された量である。

(2)-②に示すベクトルの向きの関係を図示すると以下のようになる。

電界ベクトル、磁界ベクトル、波数ベクトルの方向の関係について示しています。

ここで、ベクトルの奥行き方法は以下のように表示できる。

…奥から手前へ

…手前から奥へ

これを用いると、(2)-②に示すベクトルの向きの関係は次のように表記できる。

電界ベクトル、磁界ベクトル、波数ベクトルの方向の関係について示しています。

(2)-①で表される電磁波を図示すると、以下のようになる。ここで、図を煩雑にしないため、ekz=0としたが、ekzが0でない場合についても同様に考えることができる。

電界ベクトル・磁界ベクトルの式には位置ベクトル・波数ベクトル・角周波数が含まれますが、それらの意味を図で説明しています。

また、位相の進みと電磁波の進みの関係について図示すると、以下のようになる。

電磁波において、位置の進みと時間の進みが、位相として逆向きであることについて、示しています。

このように、位置の進みと時間の進みで、位相が逆向きになっているため、位置成分と時間成分で、符号が反対となる。

  • ​媒質間の伝搬における境界条件

以下の図に示すように、非磁性の媒質間の光の伝搬において、z=0平面を媒質間の境界面とし、電磁波が境界面に入射したときの、透過光と反射光について考える。

ここで、各パラメータの下付き添え文字は以下を意味する。

i :  入射光における値
r :   反射光における値
t :   透過光における値

入射光、反射光、透過光の電界と磁界は、(2)-①より以下のように表される。

ここで、境界面における電磁場の境界条件を考える。

z=0で電界の接線成分が連続となることより、

z=0で磁界の接線成分が連続となることより、

任意のx, y, t に対して(3)-②、(3)-③が成り立つための条件は、

​このとき、(3)-②、(3)-③は以下のようになる。

(3)-④-3より、入射光・反射光・出射光のωは、下付き添え文字を外した共通のωで表すこととする。

(3)-⑥,⑦

また、このωは媒質に依存しないことから、以下のことも言える。

(3)-⑥より、(1)-①は以下のように置き換えられる。

電磁波の各パラメータの関係式を示しています。

また、非磁性の媒質においては、(1)-④,⑤が成り立つので、(3)-⑦は更に以下のようになる。

非磁性の媒質における電磁波の各パラメータの関係式を示しています。

ここで、𝑘𝑖𝑦=0となる方向にy軸を決めても一般性を失わない。

このとき、(3)-④-1より、以下のようになる。

このことから、 𝑘𝑖𝑦=0となる方向にy軸を決めた場合、入射光・反射光・透過光は全てxz平面内にあることが言える。

また、電界・磁界はそれぞれ、入射面に対して平行に振動する成分(p偏光)と、入射面に対して垂直に振動する成分(s偏光)の和で表すことができるので、次の章ではこれらを分けて考えることとする。

  • ​p偏光におけるフレネルの公式

z=0平面の媒質の境界面への入射において、電界が入射面に対して平行に振動する場合(p偏光)について考える。このとき、入射光・反射光・透過光の電界・磁界は下図のように表される。

p偏光における入射波・反射波・透過波の電界・磁界ベクト��ルの方向と各方向成分について図示しています。

下付き添え字の1,2はそれぞれ媒質の違いを表す。

電界と磁界の向きは、(2)-②に従って図示されている。
非磁性の吸収のない媒質間の伝搬とし、(3)-⑧が適用できるものとする。

図に示されている各ベクトルを成分表示で示すと、以下のようになる。

ここで、(3)-⑧より、

(4)-④-1より、

また、(3)-④-1(境界条件の解)、(4)-①(p偏光における波数の成分表示)より、

(4)-⑤、(4)-⑥より、以下の反射の法則とスネルの法則が求められる。

反射の法則とスネルの法則の式です。

(4)-②③(p偏光における電界・磁界の成分表示)を(3)-②a, ③a(電界・磁界の振幅の境界条件) へ代入する。その際に、(4)-④-2(電界と磁界の振幅の関係式)と(4)-⑦-1(反射の法則)を適用すると以下が得られる。

よって、振幅透過率をtp、振幅反射率をrpとすると、以下のフレネルの公式(p偏光)が求められる。

p偏光のフレネルの公式です。
  • ​s偏光におけるフレネルの公式

z=0平面の媒質の境界面への入射において、電界が入射面に対して垂直に振動する場合(s偏光)について考える。このとき、入射光・反射光・透過光の電界・磁界は下図のように表される。

s偏光における入射波・反射波・透過波の電界・磁界ベクト�ルの方向と各方向成分について図示しています。

下付き添え字の1,2はそれぞれ媒質の違いを表す。

電界と磁界の向きは、(2)-②に従って図示されている。
非磁性の吸収のない媒質間の伝搬とし、(3)-⑧が適用できるものとする。

図に示されている各ベクトルを成分表示で示すと、以下のようになる。

ここで、(3)-⑧より、

(5)-④-1より、

また、(3)-④-1(境界条件の解)、(5)-①(s偏光における波数の成分表示)より、

(5)-⑤、(5)-⑥より、以下の反射の法則とスネルの法則が求められる。

(5)-②③(s偏光における電界・磁界の成分表示)を(3)-②a, ③a(電界・磁界の振幅の境界条件) へ代入する。その際に、(5)-④-2(電界と磁界の振幅の関係式)と(5)-⑦-1(反射の法則)を適用すると以下が得られる。

よって、振幅透過率をts、振幅反射率をrsとすると、以下のフレネルの公式(s偏光)が求められる。

s偏光のフレネルの公式です。
  • ​エネルギー透過率とエネルギー反射率

z=0平面上の微小領域dxdyを単位時間に通過する入射光・反射光・透過光の体積をそれぞれdVi、dVr、dVtとする。これらを図示すると以下のようになる。

媒質の境界面の微小領域を単位時間に通過する電界の入射光・反射光の領域を示しています。
媒質の境界面の微小領域を単位時間に通過する電界の入射光・透過光の領域を示しています。

図より、dVi, dVr, dVt は以下のように表される。

また、入射光、反射光、透過光のエネルギー密度はそれぞれ以下のように表される。

よって、(6)-①,②と(1)-⑤より、z=0平面上の微小領域dxdyを単位時間に通過する入射光、反射光、透過光のエネルギー量はそれぞれ以下のように表すことができる。

よって、p偏光のエネルギー透過率 Tp とエネルギー反射率 Rp はそれぞれ以下のようになる。

電磁波のp偏光のエネルギー透過率とエネルギー反射率を示しています。

(6)-④より、以下の計算結果から、エネルギー保存則を満たしていることを確認できる。

垂直入射では、以下のようになる。

また、s偏光のエネルギー透過率 Ts とエネルギー反射率 Rs はそれぞれ以下のようになる。

電磁波のs偏光のエネルギー透過率とエネルギー反射率を示しています。

(6)-⑦より、以下の計算結果からエネルギー保存則を満たしていることを確認できる。

垂直入射では以下のようになる。p偏光の垂直入射とs偏光の垂直入射は同じ状態なので、当然ながら(6)-⑥と(6)-⑨は同じ式となる。

垂直入射におけるエネルギー透過率とエネルギー反射率です。

n1=1, n2=2の場合について、(4)-⑨、(5)-⑨、(6)-④、(6)-⑦をグラフにすると以下のようになる。

振幅透過率と振幅反射率の入射角度依存性について示しています。
エネルギー透過率とエネルギー反射率の入射角度依存性について示しています。

n1>n2のときはθを大きくしていくと全反射が起こるので、これについては後に示す。

  • ​ブリュースター角

前章で示した、エネルギー反射率の入射角度依存性のグラフから判るように、p偏光はある入射角度において反射がなくなる。この角度をブリュースター角θBと言い、これを導出していく。

(4)-⑨において、rp=0となるとき、

(4)-⑦-2(スネルの法則)より、

(7)-①,②より、

ここで、以下の角度条件を考慮する。

このとき得られる解は、以下である。

再度、(4)-⑦-2(スネルの法則)より、

ブリュースター角について示しています。
  • ​全反射とエバネッセント波

​n1>n2のとき、入射光の角度を大きくしていくと、ある入射角度θで、透過光の出射角 ξ はπ/2となる。このときの入射角を臨界角と言い、(4)-⑦-2、(5)-⑦-2(スネルの法則)より、p偏光・s偏光の何れにおいても以下となる。

全反射が起こる角度の臨界角の式です。

これよりも大きい入射角度においてはスネルの法則は実数解 ξ を持たない。このとき、入射光はすべて反射する。このことを全反射と呼ぶ。n1>n2のときのエネルギー透過率・反射率の入射角度依存性は以下のようになる。

エネルギー反射率の角度依存性において、臨界角と全反射をグラフで示しています。

また、全反射条件においても、ξを複素数に拡張すると、スネルの法則は解を持つことができる。即ち、全反射条件では、 sinξは1以上の実数値となるが、このときのξは複素数である。

全反射条件における複素数解は以下のように求めることができる。

p偏光においては、全反射条件における透過光の電界・磁界は、(4)-①,②,③を(3)-①へ代入して、(8)-②, (3)-⑧, (4)-⑥, (4)-⑦-2 を適用すると以下が得られる。

s偏光においては、全反射条件における透過光の電界・磁界は、(5)-①,②,③を(3)-①へ代入して、(8)-②, (3)-⑧, (5)-⑥, (5)-⑦-2を適用すると以下が得られる。

求めた結果はあくまで、数学的に得られた解であるが、p偏光・s偏光のどちらにも共通する以下のzに依存する成分の内、複号のマイナスについては、物理的に実際に存在するエバネッセント波を表す(複号のプラスは物理的には存在しない)。

これはzに対し指数関数的に振幅が減衰していくことを意味し、振幅が1/e倍に減衰するまでの界面(z=0)からの距離(染み出し深さ)は以下で表される。

エバネッセント波の染み出し深さの式です。

エバネッセント波の染み出しが反射光の光量(エネルギー反射率)に及ぼす影響については、(8)-②を(6)-④,⑦へ代入するとRp=1, Rs=1となるので全反射で光量ロスがないことが判る。但し、Tpについては(6)-④,⑦の代入で値が零にならず、Tsについては分母が零になってしまって計算ができない。これは、TpとTsは式の導出過程でエバネッセント光を想定していないためである。

  • ​消光係数と吸収係数

改めて、(2)-①を以下に示す。

光の進行方向と同じ方向にz軸を取ると、kx=ky=0となるので、k=kzとなり、以下のように表すことができる。

ここで、(1)-①より、

今、屈折率nを以下に示す複素屈折率で置き換える。

ここで、κを消光係数と呼ぶ。

このとき、

よって、電界の強度を I とすると、

ここで、吸収係数αを以下のように定義する。

このとき、

これは、電界の強度がzに対し指数関数的に減衰することを意味し、αは強度が1/e倍になるまでのz=0からの深さを表す。

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