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​結像関係の式に基づいた
理想レンズ系の幾何学的光線伝播

まず、結像関係の式を導出する。その後、ニュートンの式を適用した、理想レンズによる幾何学的光線伝播の漸化式モデルについて示す。また、光線の初期値の与え方と終値の自動計算により、結像光学系を構築する方法についても示す。

理想レンズ(焦点距離:f)を配置して結像光学系の光線追跡を行った結果を示している。方法としては、ニュートンの式(またはニュートンの関係式)を漸化式に適用している。

※ここで説明する内容は、あくまで幾何光学的な光線伝搬のモデルですので、波動光学的な回折の影響は考慮されていません。ガウシアンビームの伝播については波動光学的な回折の影響を考慮する必要があり、理論モデルが異なりますので、以下のリンクを参照してください。

・結像関係の式の導出

物点からの光線が、焦点距離fの光学素子を介して、像点に結像する様子を図示すると、以下のようになる。

(i) f > 0, z < 0 の時、   

物点から出た光線が焦点距離fの理想レンズを介して結像する様子を示しています。この図からニュートンの式を求めることができます。

(ii) f > 0,  0 < z < f の時、

この図からニュートンの式が導出されます。

(iii) f > 0,  f < z の時、  

この図からニュートンの式が導出されます。

(iv) f < 0,  z < f の時   

ニュートンの式の導出

(v) f < 0,  f < z < 0 の時、

この図からニュートンの式が導出されます。

(vi) f < 0,  z > 0 の時、

この図からニュートンの式が導出されます。

倍率をβとすると、三角形の相似の関係より、(i)~(vi)の全て共通で、以下のことが言える。

倍率・ニュートンの式

次に、以下について考える。

理想レンズの配置による光線追跡_120.png

図より、以下のことが言える。

理想レンズの配置による光線追跡_124.png

(1)-①'、(1)-②a、(1)-②bより、

理想レンズの配置による光線追跡_123.png
理想レンズの配置による光線追跡_125.png

(1)-④、(1)-②abc、(1)-①' より、

理想レンズの配置による光線追跡_126.png

(1)-①、(1)-⑤ より、

理想レンズの配置による光線追跡_127.png

次に、縦倍率αを以下のように定義すると、(1)-①、(1)-①’、(1)-⑥より、

理想レンズの配置による光線追跡_141.png

これは、zが微小量のときのみに成り立つ点には注意が必要である。

※媒質が空気の場合:

n=n'=1より、以下のことが言える。

理想レンズの配置による光線追跡_142.png

(1)-①、(1)-①'、(1)-⑧より、以下のニュートンの式(またはニュートンの関係式)を含む関係式が得られる。

ガウスの結像式
理想レンズの配置による光線追跡_143.png

次に、(1)-③に(1)-⑧を適用することで、以下のガウスの結像式が得られる。

理想レンズの配置による光線追跡_144.png

次に、物像間距離について示す。
物像間距離を、物点を始点、像点を終点とする1次元ベクトルで定義すると、以下のように表すことができる。

縦倍率
理想レンズの配置による光線追跡_145.png

次に、縦倍率においては、(1)-⑦にn=n'=1を代入することで、以下の式が得られる。

理想レンズの配置による光線追跡_146.png

・​理想レンズによる幾何学的光線伝播の漸化式モデル

ニュートンの式を用い、理想レンズを順に配置して光線追跡を行う方法を考える。

まず、光線追跡で必要となる設定事項は以下の通りである。

第0面の設定値:

・物体高 :h0

・物体から出る光線の角度: θ0

・物体面から第1面の光学素子の前側主点までの距離:d0

 

第i面の設定値:

・光学素子の焦点距離: fi, (f’i)

・光学素子の主点間距離: HH’i

・後側主点から次面の前側主点までの距離: di

第0面と第1面について図示すると、以下のようになる。

ニュートンの式を漸化式にしたときの初期条件を示しています。

但し、設定値を青字、漸化式から計算される値を黒字とした。

図に示されている条件を式で表すと、以下のようになる。

ここで、媒質を空気とし、(1)-⑧を適用する。
また、θ
0、θ1を微小量とする。
このとき、(2)-①を整理すると、以下のようになる。

次に、第i面と第i+1面について以下に図示する。

ニュートンの式を漸化式にしたときの各パラメータについて示しています。

但し、設定値を青字、漸化式から計算される値を黒字とした。

図に示されている条件を式で表すと、以下のようになる。

ここで、媒質を空気とし、(1)-⑧を適用する。
また、θ
i、θi+1を微小量とする。
このとき、(2)-③を整理すると以下のようになる。

理想レンズの配置による光線追跡_152.png

よって、各面の設定事項の値を与え、(2)-②と(2)-④の計算を第0面から第n面(像面)まで順に行うことで、光線追跡をすることができる。

・光線の初期値の設定

次に、第0面の設定値 h0, θ0 の与え方について考える。
方法はいろいろ考えられるが、ここでは入射瞳位置と物体側開口数で与える。

物体高 y0、入射瞳までの距離 zp、物体側開口数 NAo(>0)を設定することで下図に示す5本の光線(ray1, ray2, …, ray5)を与えることができる。
 

理想レンズの配置による光線追跡_072.png

ここで、hpは入射瞳半径である。角度φ(>0)を微小量とすると、NAoは以下のように表すことができる。

理想レンズの配置による光線追跡_069.png

よって、ray1, ray2, …, ray5の各光線を表す、第0面の設定値h0, θ0はそれぞれ、以下のように求められる。

理想レンズの配置による光線追跡_071.png

・​光線の終値の計算

最後に、光学系・像面の各パラメータを自動計算で求める。

ray1(またはray2)について、第n-1面の光学素子を通った後、光線が中心軸と交わる位置を像面(第n面)になるようにdn-1を計算をする。

このとき、ray1について、第n-1面から第n面(像面)までの光線を図示すると、以下のようになる。

理想レンズの配置による光線追跡_118.png

ray1について図に示されている条件を式で表すと、以下のようになる。

理想レンズの配置による光線追跡_112.png

ここで、媒質を空気とし、(1)-⑧を適用すると、以下が得られる。

理想レンズの配置による光線追跡_153.png

そして、像面位置におけるray3の光線高さhn(ray3)を用いて、以下を計算することで、光学系全体の倍率βを求めることができる。

理想レンズの配置による光線追跡_110.png

更に、像側開口数NAiは以下のように計算できる。

理想レンズの配置による光線追跡_083.png

また、ray4については、第n-1面の光学素子を通った後、光線が中心軸と交わる位置は、射出瞳位置である。第n-1面の後側主点から射出瞳までの距離をdn-1(p)とし、また、像面から射出瞳までの距離をzp'とする。

このとき、ray4について、第n-1面から射出瞳面までの光線を図示すると、以下のようになる。

理想レンズの配置による光線追跡_119.png

ray4について図に示されている条件を式で表すと、以下のようになる。

理想レンズの配置による光線追跡_107.png

ここで、媒質を空気とし、(1)-⑧を適用すると、以下が得られる。

理想レンズの配置による光線追跡_154.png

よって、射出瞳位置zp'は以下のように計算できる。

理想レンズの配置による光線追跡_114.png

​​・光線追跡のフォーマット作成

ここまで示した漸化式を適用し、理想レンズを配置して光線追跡を行うフォーマットをエクセルで作成する事例について示す。

・入力部:

以下の黒い枠内に各設定値の値を入力する。第9面まであるが、全て入力する必要はなく、余った面については、焦点距離は無限大に相当する十分に大きな値、主点間距離と面間距離については値を零にしておけばよい。

理想レンズの配置による光線追跡_101.png

・計算部:

ray1からray5まで、それぞれ別々に光線追跡の計算を行う。赤と青の枠内は入力値を参照している。

理想レンズの配置による光線追跡_100.png

・光線追跡用データ部:

​以下は、光線追跡の結果を図にするためのデータである。光軸方向の位置は、各面についてLとL+HH'で与えている。また、主点間の光線を描かないようにするため、行を空けてある。ray3,4,5においては、これらを光軸に対し反転させたray3*,4*,5*を新たに追加した。

理想レンズの配置による光線追跡_099.png

​・光線追跡結果表示部:

光線追跡の結果を図にすると以下のようになる。また、光学系・像面の各パラメータの計算結果も併せて表示させた。

理想レンズの配置による光線追跡_098.png

以上のようにして、エクセルを用いることで、理想レンズを配置して光線追跡を行うことができる。このフォーマットを以下に掲載する。

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