二界面薄膜干渉の透過・反射強度式の電磁波方程式による導出
干渉強度は、電磁波の重ね合わせとして定量的に記述できる。本章では、電磁波の基本式(EM1)から出発し、複数の波が重ね合わさったときに観測される光強度の一般式を導出する。この一般式は、曲率をもつ界面で生じる干渉縞(ニュートンリングなど)から、二界面での多重反射が支配する薄膜干渉における透過・反射強度式まで、幅広い干渉現象を統一的に説明する基盤となる。見かけ上の明暗だけでは捉えきれない干渉の振る舞いを、電磁波方程式に基づいて理解していく。
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垂直入射近似における二界面薄膜干渉
・電磁波の式から導く垂直入射近似における二界面薄膜干渉
ここでは、電磁波の式 (EM1) に基づき、垂直入射近似における二界面干渉の導出を行う。まず、系のモデルについて、概要とパラメータを以下に示す。
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z軸に対し、-∞~0の領域を媒質1、0~dの領域を媒質2、d~+∞の領域を媒質3とする。
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各媒質での吸収はないものとする。
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入射光はz=-∞から+z方向に進行して媒質2へ入射する。
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入射光の電界ベクトルをEi、透過光の電界ベクト ルをEt、反射光の電界ベクトルをErとする。
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透過光の電界ベクトルは、多重反射における各透過次数に対応する電界成分の総和として与えられ、それぞれの成分をEtm(𝑚は自然数)で表す。
また、反射光の電界ベクトルは、多重反射における各反射次数に対応する電界成分の総和として与えられ、それぞれの成分をErm(𝑚は0以上の整数)で表す。
式で表すと以下のようになる。

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媒質1,2の界面と媒質2,3の界面ではそれぞれ透過と反射が起こり、各面での振幅透過率と振幅反射率は以下で表す。
・媒質1から媒質2へ入射する際の、
振幅透過率:t12
振幅反射率:r12
・媒質2から媒質1へ入射する際の、
振幅透過率:t'12
振幅反射率:r'12
・媒質2から媒質3へ入射する際の、
振幅透過率:t23
振幅反射率:r23
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媒質1,2,3における光の波数をk1, k2, k3(+z方向を正)、角周波数をωと定義する。
これらを踏まえて、各面の透過と反射を図示すると以下のようになる。

入射光と反射光の電界ベクトルは以下のように表される。

但し、
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入射光の電界振幅ベクトルをEAi
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多重反射における各透過次数に対応する透過光成分の電界振幅ベクトルをEAtm(mは自然数)、
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多重反射における各反射次数に対応する反射光成分の電界振幅ベクトルをEArm(mは0以上の整数)
とする。
ここで、電界の振幅ベクトルを以下のように振幅(スカラー量)と単位方向ベクトルeEAの積で表す。

(1)-③を(1)-②へ代入すると以下のようになる。

(1)-②’を(1)-①へ代入すると以下のようになる。

ここで、以下のように置く。

これを(1)-①'に代入すると、以下のようになる。

ここでは、電界が媒質1と媒質2の界面に入射する直前から、界面での多重反射を経て+z方向・-z方向へ出射する直後までに生じる振幅および位相の変化は、すべて各透過・反射次数に対応する透過・反射光成分の振幅ベクトルに含めて扱う。このとき、各振幅は次のように表される。

ここで、ストークスの関係式( (EM1)-(9)-② )より、以下のことが言える。

(1)-⑥を(1)-⑤へ代入すると、以下のようになる。

これを(1)-④へ代入して整理すると以下のようになる。

よって、系全体の振幅反射率 r と振幅透過率 t は以下のようになる。

(EM1)-(6)-④ より、エネルギー反射率・エネルギー透過率は以下のように求められる。

よって、エネルギー反射率とエネルギー透過率の和は以下のようになる。

ここで、媒質1,2,3の屈折率をn1,n2,n3とすると、フレネルの法則( (EM1)-(4)-⑨'c, (EM1)-(5)-⑨'c )より、各界面の振幅反射率・振幅透過率は各媒質の屈折率を用いて以下のように表される。

これを(1)-⑨中の該当部分に適用すると、以下のようになる。

よって、(1)-⑨の分子と分母は等しくなり、エネルギー透過率とエネルギー反射率の和は以下のように1になることが言える。

・二界面薄膜干渉における膜厚変化と強度変化の複素平面表示
ここからは反射光のみに着目し、干渉によって生じる光量分布について考察を行う。
反射光の光量をIrとすると、Irは反射光の電界ベクトルの絶対値の二乗に比例するので、以下のように求められる。

真空中での波長をλ0とすると、k2=2πn2/λ0より、

二界面干渉の極大・極小条件は、媒質の屈折率関係によって反転することがある。この反転は、反射のたびに生じる位相変化が振幅の向きにどう影響するかを理解しないと、式だけでは直感的に捉えにくい。
そこで、反射振幅を複素平面上のベクトルとして表し、その向きの変化を幾何学的に追うことで、干渉条件の反転を直観的に追っていく。
そこで、ここからは、(1)-④'の反射成分について、dを変数としたときの複素平面上の軌跡を求めていく。
まず、(1)-④'の反射成分の標準形を以下のように求める。

よって、複素平面上の円の軌跡の中心位置をh、曲率半径をRとすると、以下のようになる。

ここで、(1)-④'の反射成分と(1)-⑬より、以下の関係が得られる。

以上より、複素平面上の円軌跡は以下のように求められる。この円軌跡は、膜厚 𝑑 の変化に伴う反射振幅の位相回転を表しており、反射強度の極大・極小条件を幾何学的に理解できる。
(i)

のとき、

(ii)

のとき、

(iii)

のとき、

(iv)

のとき、

(v)

のとき、

(vi)

のとき、

(vii)

のとき、

(viii)

のとき、

(ix)

のとき、

(x)

のとき、

(xi)

のとき、

(xii)

のとき、

以上のことから、次のことが言える。
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媒質2の屈折率が、媒質1,3よりも高い、もしくは、媒質1,3よりも低いとき、
・d=mλ0/2n2のとき、強度は極小 (特にn1=n3のとき強度はゼロ)
・d=(2m+1)λ0/4n2のとき、強度は極大
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媒質2の屈折率が、媒質1よりも高く媒質3よりも低い、もしくは、媒質3よりも高く媒質1よりも低いとき、
・d=mλ0/2n2のとき、強度は極大
・d=(2m+1)λ0/4n2のとき、強度は極小
この点を理解しておくと、例えばニュートンリング [1]の中央が明るくなる条件と暗くなる条件を判断できる。通常、ニュートンリングでは媒質2が空気であるため媒質1・3より屈折率が小さく、中央で接触している場合には中央は暗くなる。その様子を次で示す。
・事例:ニュートンリングにおける干渉強度分布
下図のように、媒質1が曲率半径Rの緩やかな湾曲を持ち、x=0で媒質3に接している場合を考える。

このとき、dはxの関数として、以下のように表される。

更に、干渉が起きる条件(媒質2は波長オーダーの厚さ)においては、x≪Rであることから、一般的には以下の近似式が適用される。

ここで、各パラメータの値を、
n1=1.5
n2=1
n3=1.5
λ0=0.00055mm
R=10000mm
とする。
このとき、(1)-⑩、(1)-⑪'、(1)-⑮より、xに対する光の強度分布は以下のグラフのように表され、また、複素平面の(ix)のケースに該当することから、極大・極小におけるdの値もグラフ中に以下のように併記することができる。

ここまでは簡単化のために垂直入射の場合を扱ってきたが、実際の光学現象では斜め入射で考える方がより一般的である。今後、斜め入射(s偏光・p偏光)のケースについても順次掲載していく予定である。
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参考文献
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関連文献
[A]井上光輝・中島信一『光学』共立出版
[B]田中拓男『光学入門』裳華房
[C]Max Born & Emil Wolf, Principles of Optics, Cambridge University Press
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更新履歴
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2026-06 新規公開