固浸レンズ(SIL)の原理
顕微鏡の解像度を劇的に上げる方法として知られる、固浸レンズについて、その原理を示していく。
・固浸レンズとは
顕微鏡観察の大きなモチベーションとしては、解像度よく観察することである。その解像限界(アッベの解像限界)は以下の式で表される。

ここで、λは波長、NAは開口数である。
よって、解像限界を上げて、より細かいものを観察するためには、開口数を上げることが必要である。開口数は以下の式で表される。

ここで、φは対物レンズの集光角、nは媒質の屈折率である。このことから判るように、空気中においては、開口数は最大でも1であり、これよりも開口数を大きくするためには、媒質の屈折率を上げるしかない。この媒質に液体を用いるのが液浸レンズであり、固体を用いるのが固浸レンズである。
固浸レンズは、入射面が球面の場合においては、以下の2種類のタイプがあることが知られている。
(i) 半球型
集光位置が入射面の球心と一致するとき、媒質へ入射する前後で光線は曲がらないので、この集光点は無収差となる。また、集光角も媒質へ入射する前後で変わらないので、開口数は固浸レンズなしに対しn倍となる。

(ii) 超半球型(ワイエルストラス球型)
集光位置が入射面の球心に対しr/nだけ下がった位置となるとき、この集光点は無収差となる。このとき、固浸レンズなしに対し固浸レンズありのNAはn^2倍になるので、倍率もn^2倍になる。

(i) において集光点が無収差になるのは自明だが、(ii) において集光点が無収差となることについては、直感的に理解するのは難しいので、次の章で導出していく。
・ワイエ ルストラス球状固浸レンズの原理
超半球状固浸レンズとそれを通る光線を図示すると以下のようになる。

ここで、r, t, n はφに依存しない定数で、それ以外のパラメータはφの関数で表される。
図より、以下のことが言える。

①、②、③、④より、

(i) nr = t のとき、
⑤、⑥、⑦、⑧より、

⑧aより、dはφに依存しない定数なので、点Pへの結像は無収差であることが示された。
更に、⑥⑦aを書き換えると、

よって、φ, θ の最大値をそれぞれ φMAX, θMAX とすると、
・対物レンズ観察の開口数:
・固浸レンズ観察の開口数:
ゆえに、固浸レンズ観察の開口数は対物レンズ観察の開口数に対しn^2倍になるので、倍率もn^2倍になる。