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材料の吸収係数を
透過率測定から求める方法

厚さが判っている平行平面基板材料(両面研磨)の透過率を実測し、実測結果から吸収係数を算出し、任意の厚さに対する透過率を計算する式を導出していく。

吸収係数 α について

内部吸収がある材料(吸収係数 α)において、その材料の任意の位置 x から、距離 t だけ離れた位置まで光が伝搬する間に、光量は exp(-αt)倍に減衰する。

材料の透過率測定より吸収係数を算出する方法_026.png

また、光がその材料中を距離1/αだけ伝搬する間に、光量は1/e倍(約37%)になる。この距離を吸収長(または吸収深さ)と呼び、その材料が透過できる厚さの目安として扱う。

材料の透過率測定より吸収係数を算出する方法_025.png

この吸収係数 α の値を、その材料の透過率実測から求める方法について次に示す。

透過率実測からの吸収係数 α の導出

​まず、パラメータについて定義する。厚さが判っている平行平面基板材料(両面研磨)の透過率実測において、

I0:  入射光の光量

T0:  測定材料の表面・裏面のエネルギー透過率

R0:  測定材料の表面・裏面のエネルギー反射率

t0:  測定材料の厚さ

TM:  測定材料の全透過率(測定量)

RM:  測定材料の全反射率

α:  測定材料の吸収係数(未知量)

ここで、t0以外は波長の関数として分光計測を行ってもよい。測定結果からαを導出することで、最終的に以下の関係式を得る。

t:  材料の厚さ(変数)

T:  材料の全透過率(変数)

このとき、まず以下のことが言える。

・各面におけるエネルギー透過率 T0 は、エネルギー反射率 R0 を用いて以下の式で表される。

材料の透過率測定より吸収係数を算出する方法_018.png

※R0の与え方については後述する。

​・測定材質の内部を厚さ t進む間に、光量は exp(-αt0) 倍に減衰する。

以上を踏まえ、光線の透過・反射による分岐と内部吸収を図示すると以下のようになる。

材料の透過率測定より吸収係数を算出する方法_012.png

​上図に示される多重反射を考慮すると、全透過率 Tと全反射率 Rは以下のように計算される。

材料の透過率測定より吸収係数を算出する方法_004.png
材料の透過率測定より吸収係数を算出する方法_007.png

​②a,bへ①を代入して Tを消去すると、以下の式が得られる。

材料の透過率測定より吸収係数を算出する方法_006.png

​②a’を変形すると、以下のように吸収係数 α が求まる。

材料の透過率測定より吸収係数を算出する方法_008.png

​ここで、同様に②b'を変形して全反射率RMを適用してαを算出することもできるが、その場合は材料に入射する前の反射光が支配的となるため、精度よくαを求めることが難しいので、お勧めはしない。

求まった吸収係数 α を用い、全透過率 T を任意の厚さ t の関数として求めるには、②a'において、TM を T、t0 を t に置き換えることで、以下の式が得られる。

材料の透過率測定より吸収係数を算出する方法_011.png

各面のエネルギー反射率 Rの与え方について

​(i) 反射率の測定から求める方法

以下のように裏面反射除去シートを用いて多重反射を抑えることで、エネルギー反射率 R0 を実測により求めることができる。

材料の透過率測定より吸収係数を算出する方法_015.png

​(ii) 屈折率値から計算で求める方法

媒質による吸収を加味した、測定媒質の表面・裏面のエネルギー反射率は、垂直入射において以下のようになる。

材料の透過率測定より吸収係数を算出する方法_028.png

ここで、λを波長としたとき、κとαの関係は以下で表される。

材料の透過率測定より吸収係数を算出する方法_029.png

④aから判るように、吸収がある媒質のエネルギー反射率R0を計算で求めるためには、本来、その材質の屈折率nと消光係数κの両方の値が必要である。しかし、吸収係数αを測定から求めたいわけなので、④bよりそもそも消光係数κは未知の量である。

ここで、λ=0.00055mmとしたとき、吸収長1/αとκの関係をグラフにすると、以下のようになる。

材料の透過率測定より吸収係数を算出する方法_031.png

このことから判るように、サンプル媒質の吸収長1/αが薄膜レベルまで薄くならない限りは、κは屈折率に対し桁的に十分に小さい値を取るため、κはR0の値に殆ど影響を与えない。

​よって、サンプルが薄膜ではなく十分な厚さを持ったバルクで、且つ、測定できるだけの十分な透過光が得られるのであれば、その時点で消光係数κの値は屈折率nよりも十分に小さく、④aの計算においてκは無視しても差し支えないことが言え、以下の吸収のない媒質における計算式を適用しても差し支えない。

材料の透過率測定より吸収係数を算出する方法_030.png
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