材料の吸収係数を
透過率測定から求める方法
厚さが判っている平行平面基板材料(両面研磨)の透過率を実測し、実測結果から吸収係数を算出することで、任意の厚さに対する内部透過率を計算することができるので、その方法について示す。
・透過率実測からの吸収係数 α の導出 ~固体の場合~
(i) サンプル準備
まず、両面を鏡面研磨した平行平面のサンプル材を用意し、板厚を実測する。

t0: サンプル材の厚さ
ここで、表面反射は計算や実測で加味することができるので、敢えて反射防止コートはしない(反射防止コートをすると表面反射や膜による吸収の加味がかえって複雑になってしまうため)。
(ii) 境界面における透過・反射のエネルギー透過率・エネルギー反射率の導出
以下の図に示す、空気とサンプル材の境界面における透過・反射のエネルギー透過率・エネルギー反射率を導出していく。

R0: 空気とサンプル材の境界面における反射のエネルギー反射率
T0: 空気とサンプル材の境界面における透過のエネルギー透過率
(ii)-1. エネルギー反射率の導出
(ii)-1a. 全系反射率の測定から求める方法
以下のように裏面反射除去シートを用いることで、多重反射を抑制することができる。

これにより、全系反射光そのものが、空気とサンプル材の境界面(1面)からの反射光となるため、これの強度を測定することで、エネルギー反射率を求めることができる。
具体的には、サンプル材の全系反射光量 I0R0 を、入射光量 I0 で割り算することで、エネルギー反射率 R0 を求めることができる。
(ii)-1b 屈折率値から計算で求める方法
媒質による吸収を加味した、測定媒質の表面・裏面のエネルギー反射率は、垂直入射において以下のようになる。

※nは媒質の屈折率、κは媒質の消光係数
ここで、屈折率nは既知量とする。
また、λを波長としたとき、κとαの関係は以下で表される。

(1)-①aから判るように、吸収がある媒質のエネルギー反射率R0を計算で求めるためには、本来、その材質の屈折率nと消光係数κの両方の値が必要である。しかし、吸収係数αを測定から求めたいわけなので、(1)-①bよりそもそも消光係数κは未知の量である。よって、このままだと式の数より未知の量の数の方が多くなってしまい、解くことができない。
ここで、λ=0.00055mmとしたとき、吸収長1/αとκの関係をグラフにすると、以下のようになる。

このことから判るように、サンプル媒質の吸収長1/αが薄膜レベルまで薄くならない限りは、κは屈折率に対し桁的に十分に小さい値を取るため、κはR0の値に殆ど影響を与えない。
よって、サンプル材が薄膜ではなく十分な厚さを持ったバルクで、且つ、測定できるだけの十分な透過光が得られるのであれば、その時点で消光係数κの値は屈折率nよりも十分に小さく、(1)-①aの計算においてκは無視しても差し支えないことが言え、以下の吸収のない媒質における計算式を適用しても差し支えない。このように近似をすればR0を計算で求めることができる。

(ii)-2. エネルギー透過率の導出
コートなしの場合、空気とサンプル材の界面での吸収はないものとみなせるので、各面におけるエネルギー透過率 T0 は、エネルギー反射率 R0 を用いて以下の式で表される。

更に、(1)-①a'を適用すると、以下のようにサンプル材の屈折率で表すこともできる。

(iii) サンプル材の全系透過率・全系反射率の実測
サンプル材に対する、入射光量・全系透過光量・全系反射光量を実測する。
※吸収係数導出の際には実際には全系反射光量の測定は不要であるが、ここでは参考のため全系反射光についても扱っていく。

I0: 入射光の光量
TM: サンプル材の全系透過率
RM: サンプル材の全系反射率
サンプル材の全系透過光量と全系反射光量はそれぞれ、I0TM, I0RMで表されるから、これらそれぞれを入射光量 I0 で割り算すると、サンプル材の全系透過率TM, 全系反射率RMが得られる。
(iv) 実測結果からの吸収係数導出
前述のとおり、求める吸収係数をαとすると、サンプル材の厚さ t0 だけ進む間に、吸収により光量は exp(-αt0) 倍に減衰する。
このことを踏まえ、吸収係数αは以下のようにして求めることができる。
(iv)-1. 簡易計算による方法
境界面における光線の透過・反射による分岐と内部吸収、全系透過光強度を図示すると以下のようになる(但し多重反射はここでは加味しない)。

上図より、 吸収係数αは以下のように計算される。

(1)-②、(1)-③より、

更に、(1)-①a'を適用することで、以下のように表すこともできる。

(iv)-2. 多重反射を加味した方法
境界面における光線の透過・反射による分岐と内部吸収、全系透過光・全系反射光を、多重反射まで加味して図示すると以下のようになる。

上図に示される多重反射を加味すると、サンプル材の全系透過率 TM ,全系反射率 RMは以下のように計算される。


(1)-④a,bへ(1)-②を代入して T0 を消去すると、以下の式が得られる。

(1)-④a’を変形すると、以下のように吸収係数 α が求まる。

更に、(1)-①a’を代入すると、αは媒質の屈折率nを用いて以下のように表すこともできる。

ここで、同様に(1)-④b'を変形して全系反射率RMを適用してαを算出することもできなくはないが、その場合は材料に入射する前の反射光が支配的となるため、精度よくαを求めることが難しいので、お勧めはしない。そのため、前述の通り実際には全系透過光量のみを測れば吸収係数は求まる。
(iv)-3. 簡易計算と多重反射を加味した場合の比較
簡易計算と多重反射を加味した場合のそれぞれにおいて、各屈折率値におけるTMとt0αの関係をプロットすると以下のようになる。

但し、簡易計算の結果が破線、多重反射を加味した場合の結果が実線である。
この図から判るように、媒質の屈折率nが大きい程、また、t0αの値が小さいとき程、簡易計算と多重反射を加味した場合の計算値の開きが大きくなる。
以上のように、サンプル材の透過率測定から吸収係数を求める方法について示してきた。但し、サンプル材による吸収が極端に多くて殆ど透過光が得られない場合や、サンプル材による吸収が殆どなくて表面反射の影響しか測定結果に表れない場合には、測定結果から吸収係数を求めることは難しい。そのような際には、サンプル材の厚さを測定に適した厚さに変えることで測定できる場合もあるし、エリプソメトリーを適用するという方法もある。
・透過率実測からの吸収係数 α の導出 ~液体の場合~
(i) サンプルを入れる容器の準備

t01 : 容器(入射側)の厚さ
ts : サンプル層の厚さ
t02 : 容器(出射側)の厚さ
n0 : 容器の屈折率
α0 : 容器の吸収係数
(ii) 容器のみの透過測定

I0 : 入射光量
IR : 容器のみの全系透過光量
TR : 容器のみの全系透過率
T0 : 容器と空気の界面のエネルギー透過率
図より、以下のことが言える。


ここで、層数が多いので多重反射まで考慮するとかなり計算が複雑になるので、ここでは多重反射は考慮していない。
TRは (2)-①a' (I0とIRの実測) と (2)-①b' (計算) の両方から求められるので、それらが一致することを確認しておくとよい。
(1)-②' と同様にして、

(iii) サンプル入り容器の透過測定

IM : サンプル入り容器の全系透過光量
TM : サンプル入り容器の全系透過率
Ts : 容器とサンプルの界面のエネルギー透過率
ns : サンプルの屈折率
αs : サンプルの吸収係数(未知量)
図より、以下のことが言える。

ここで、層数が多いので多重反射まで考慮するとかなり計算が複雑になるので、ここでは多重反射は考慮していない。
(1)-②' と同様にして、

(iv) サンプルの吸収係数の導出
(2)-①b, (2)-③b より、

(2)-②, (2)-④ を代入して、


