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​スネルの法則から導かれる
平行平面板における関係式

光線の物質界面での屈折の法則(スネルの法則)から、様々な関係式を導くことができる。ここでは、実用的なものをいくつか紹介する。

  • ​平行平面板に垂直に入射した収束光の結像位置

​実像が平行平面板の中にある場合と、平行平面を出た先にある場合の、2通りに分けて、虚像に対する実像の位置について求める。

平行平面板を通る光線の光線図を虚像と併せて示しています。

(1) 実像が平行平面板中にある場合:

平行平面板中で結像する光線をスネルの法則に基づいて示しています。

ここで、dhとdθ1とdθ2は微小量とする。また、右向きの矢印は正の値、左向きの矢印は負の値を意味する。

​図に示されている条件を式で表すと、以下のようになる。

平行平面板と結像位置の関係_012.png

​ここで、2番目の式はスネルの法則である。また、dθ1とdθ2は微小量であるから、以下のことが言える。

よって、元の式は以下のように置き換えられる。

平行平面板と結像位置の関係_011.png

これを解くと、以下が導出される。

平行平面板の内部に結像した光線とその虚像の位置の差

(2) 実像が平行平面板を出た先にある場合:

平行平面板を通った光線についてスネルの法則に基づいて示しています。

ここで、dhとdθ1とdθ2は微小量とする。また、右向きの矢印は正の値、左向きの矢印は負の値を意味する。

​図に示されている条件を式で表すと、以下のようになる。

平行平面板と結像位置の関係_023.png

​ここで、2番目の式はスネルの法則である。また、dθ1とdθ2は微小量であるから、以下のことが言える。

よって、元の式は以下のように置き換えられる。

平行平面板と結像位置の関係_024.png

これを解くと、以下が導出される。

平行平面板を通った光線と虚像の結像位置の差
  • ​平行平面板を光軸に対し斜めに配置したときの結像位置

以下のように平行平面板に斜めに入射して、出射した先で結像する光束を考える。このときのΔxとΔyを求める。

平行平面板に斜め入射する光線に対する結像位置をスネルの法則に基づき示しています。

​ここで、dh、dθ1、dθ2は微小量とする。

​図に示されている条件を式で表すと、

​③の両辺を微分して、

①、②、③’、④、⑤より、s, xA, xB, dh, dθ1, dθ2を消去すると、

ここで、①、⑥より、

また、③より、

よって、求める解は以下のように表すことができる。

更に、③を適用してθ2を消去すると、

平行平面板を通った光線の光軸方向の虚像に対するシフト量
平行平面板を通った光線の横方向のシフト量

ここで具体例として、θ1=45[deg], n=1.5とすると、

となり、このとき概ね、Δxは t の1/2、Δyは t の1/3となる。

  • ​平行平面板で発生する球面収差量

以下の光学配置について考える。

平行平面板で発生する球面収差について示しています。

1とdθ2は微小量とし、縦方向球面収差 δs横方向球面収差 δについて求めていく。

図に示されている条件を式で表すと、以下のようになる。

平行平面板と結像位置の関係_029.png

​①と③はスネルの法則、⑤は開口数を表す。

​①、②、⑤より、

平行平面板と結像位置の関係_030.png

​③、④より、

平行平面板と結像位置の関係_031.png

​②'、④'より、縦方向球面収差は以下のようになる。

平行平面板で発��生する縦方向球面収差量

​⑥、⑦より、横方向球面収差は以下のようになる。

平行平面板で発生する横方向球面収差量

球面収差量を図示すると以下のようになる。図から判るように、同じ板厚に対しては比屈折率が1.6辺りで、球面収差量がピークになる。

平行平面板で発生する縦方向球面収差量の屈折率依存性
平行平面板で発生する横方向球面収差量の屈折率依存性

​ここで、収差の影響について考察する。

波動光学的な回折広がりによる点像分解能(エアリーディスク半径)は、以下の式で表される。

波動光学的な回折広がりによるスポットのボケ量

​あくまで大まかな目安であるが、δxがδdよりも十分に小さいときには、δdが分解能において支配的となるため、δxの影響は小さいと言える。一方で、δxがδdよりも十分に大きいときは、δxが分解能において支配的となる。

δxとδdの比較のグラフを以下に示す。あくまで大まかな目安であるが、可視光で、カバーガラス(厚さ約0.15mm程度)においてはNA0.32以上、厚さ1.5ミリのガラスにおいてはNA0.18以上で、回折広がりの点像分解能よりも球面収差の影響が支配的になる。

NAを変数としたときの、横方向球面収差量と回折広がりによるスポットのボケ量の比較
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