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​スネルの法則から導かれる
平行平面板における関係式

光線の物質界面での屈折の法則(スネルの法則)から、様々な関係式を導くことができる。ここでは、実用的なものをいくつか紹介する。

  • ​平行平面板に垂直に入射した収束光の結像位置

​実像が平行平面板の中にある場合と、平行平面を出た先にある場合の、2通りに分けて、虚像に対する実像の位置について求める。

平行平面板を通る光線の光線図を虚像と併せて示しています。

(1) 実像が平行平面板中にある場合:

平行平面板と結像位置の関係_042.png

ここで、dhとdθ1とdθ2は微小量とする。

​図に示されている条件を式で表すと、以下のようになる。

平行平面板と結像位置の関係_043.png

​ここで、2番目の式はスネルの法則である。また、dθ1とdθ2は微小量であるから、以下のことが言える。

よって、元の式は以下のように置き換えられる。

平行平面板と結像位置の関係_044.png

これを解くと、以下が導出される。

平行平面板の内部に結像した光線とその虚像の位置の差

(2) 実像が平行平面板を出た先にある場合:

平行平面板と結像位置の関係_045.png

ここで、dhとdθ1とdθ2は微小量とする。

​図に示されている条件を式で表すと、以下のようになる。

平行平面板と結像位置の関係_046.png

​ここで、2番目の式はスネルの法則である。また、dθ1とdθ2は微小量であるから、以下のことが言える。

よって、元の式は以下のように置き換えられる。

平行平面板と結像位置の関係_047.png

これを解くと、以下が導出される。

平行平面板を通った光線と虚像の結像位置の差
  • ​平行平面板を光軸に対し斜めに配置したときの結像位置

以下のように平行平面板に斜めに入射して、出射した先で結像する光束を考える。このときのΔxとΔyを求める。

平行平面板斜め入射_015.png

​ここで、dh、dθ1、dθ2は微小量とする。

​図に示されている条件を式で表すと、

平行平面板斜め入射_016.png

ここで、④の立式について触れておく。dθ1とdθ2は微小量であることから、赤線と緑点線は平行であるとみなすと、以下のように、境界面に入射前の光線幅は、境界面を通った後の光線幅に対し、cosθ1/cosθ2倍になるので、このことを加味して④を立式した。

平行平面板斜め入射_021.png

​③の両辺を微分して、

①、②、③’、④、⑤より、s, xA, xB, x0, dh, dθ1, dθ2を消去すると、

平行平面板斜め入射_017.png

ここで、①、⑥より、

また、③より、

よって、求める解は以下のように表すことができる。

平行平面板斜め入射_018.png

更に、③を適用してθ2を消去すると、

平行平面板斜め入射_019.png
平行平面板を通った光線の横方向のシフト量

ここで具体例として、θ1=45[deg], n=1.5とすると、以下のようになる。

平行平面板斜め入射_020.png
  • ​平行平面板で発生する球面収差量

以下の光学配置について考える。

平行平面板で発生する球面収差について示しています。

1とdθ2は微小量とし、縦方向球面収差 δs横方向球面収差 δについて求めていく。

図に示されている条件を式で表すと、以下のようになる。

平行平面板と結像位置の関係_029.png

​①と③はスネルの法則、⑤は開口数を表す。

​①、②、⑤より、

平行平面板と結像位置の関係_030.png

​③、④より、

平行平面板と結像位置の関係_031.png

​②'、④'より、縦方向球面収差は以下のようになる。

平行平面板で発��生する縦方向球面収差量

​⑥、⑦より、横方向球面収差は以下のようになる。

平行平面板で発生する横方向球面収差量

球面収差量を図示すると以下のようになる。図から判るように、同じ板厚に対しては比屈折率が1.6辺りで、球面収差量がピークになる。

平行平面板で発生する縦方向球面収差量の屈折率依存性
平行平面板で発生する横方向球面収差量の屈折率依存性

​ここで、収差の影響について考察する。

波動光学的な回折広がりによる点像分解能(エアリーディスク半径)は、以下の式で表される。

波動光学的な回折広がりによるスポットのボケ量

​あくまで大まかな目安であるが、δxがδdよりも十分に小さいときには、δdが分解能において支配的となるため、δxの影響は小さいと言える。一方で、δxがδdよりも十分に大きいときは、δxが分解能において支配的となる。

δxとδdの比較のグラフを以下に示す。あくまで大まかな目安であるが、波長532nmでは、カバーガラス(厚さ約0.15mm程度)においてはNA0.32以上、厚さ1.5ミリのガラスにおいてはNA0.18以上で、回折広がりの点像分解能よりも球面収差の影響が支配的になり、また、波長1064nmでは、カバーガラス(厚さ約0.15mm程度)においてはNA0.38以上、厚さ1.5ミリのガラスにおいてはNA0.22以上で、回折広がりの点像分解能よりも球面収差の影響が支配的になる。

NAを変数としたときの、横方向球面収差量と回折広��がりによるスポットのボケ量の比較
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