円形開口による点像の電場分布と
エアリーパターンの導出
光学系が一点を結ぶとき、その像は理想的な点にはならず、電磁波としての性質によって広がりをもった分布として現れるのである。とりわけ円形開口をもつ光学系では、この点像は特徴的な縞構造を示し、中心の明るいピークと同心円状の暗帯・明帯からなる エアリーパターン(Airy pattern)として知られている。本ページでは、円形開口を通過した電磁波がどのように干渉し、点像の強度分布を形成するのかを、電磁波の立場から丁寧に導く。 幾何光学では捉えきれない像の広がりや限界分解能の本質を、電磁波の振る舞いとして理解するための道筋を示すものである。
・球面波の電磁波的表現
点に収束する光は、電磁波としては球面波で表される。ここでは、球面波の電界強度が距離 r に対してどのように変化するかを示す。

まず、収束点から距離 r の位置に、微小立体角 dΩ に対応する面積要素 dS(r) を考える。 立体角の定義より、球面半径 r における面積要素は以下のように表される。

したがって、距離 r に対して面積要素は以下のようになる。

次に、距離 r における電磁エネルギー密度 u(r) は、誘電率 ε と電界強度 E(r) を用いて、以下のように表される。

球面波では、収束点へ向かうエネルギー流(パワー)は距離によらず一定である。したがって、光速 c を用いると、エネルギー流は以下のようになる。

よって、(1)-①', ②, ③より、以下の関係が得られる。

したがって、電界強度は距離に対して、以下のようになる。

この関係は、この後のエアリーパターンの導出の中で用いる。
・エアリーパターンの導出
半径 a の円形開口に焦点距離 f のレンズを配置し、平面波を入射すると、レンズは波面を球面へ変換し、焦点面に点像を形成する光学系となる。この系について考える。

レンズから焦点面までの距離をRとすると、平面波入射に対しては、f=Rとなる。
但し、aに対しRは十分に大きいとする。
ここで、円形開口部には変数座標 P(X,Y) を、像面には変数座標 I(x,y) を定義し、両者の対応を考える。

今、レンズを出射した直後の球面波を基準波面として、ここから像面までの波面の変化を追っていく。
まず、PIは以下のように表すことができる。

ここで、R≫a より、(2)-①は以下のように近似することができる。 この近似は、距離 R に比べて開口半径 a が十分小さいため、平方根の式をテイラー展開し、一次の項までを残して高次項を無視することで得られる。

また、像面と光軸が交わる点をO'とし、PO'と基準波面が交わる点をMとする。このとき、PMは以下のように表すことができる(ここでも同様にR≫aの近似を適用)。

よって、MIは以下のようになる(ここでも同様にR≫aの近似を適用)。

ここで、開口面の振幅・位相分布をA(X,Y)とする。
(1)-④' の結果より、像面上の点 I における電界のうち、開口面の点 M に由来する成分は次式で表される。

ここで、ベクトルkは波数ベクトルである。ベクトルkとベクトルMIの向きは同じなので、これらの積は絶対値のスカラー積となり、

したがって、点 I における電界は、開口面全体にわたる寄与を積分することで次のように求められる。

ここで A(X,Y)=1とし、(2)-③を代入すると、 1/MI(x,y,X,Y)は距離 Rに対してほぼ一定とみなせるので 1/Rで近似できる。 このとき、1/R や共通位相などの定数項は積分の外に出すことができ、以下のようになる。

更に、以下の座標系を導入する。

こ のとき、θx=x/R、θy=y/R で表されるので、(2)-⑥以下のように書き換えられる。

更に、以下の座標変換を行う。


(2)-⑧,⑨より、以下が成り立つ。

これらを適用すると、(2)-⑦は以下のように書き換えられる。

長方形領域の重積分は積分の順序を入れ替えられるので、

0〜2π の範囲での角度積分は、積分区間が一周しているので、ψ をどれだけずらしても結果は変わらないため、ψは消去でき、

ここで、0次の第1種ベッセル関数を適用すると、以下が成り立つ。

(2)-⑭を(2)-⑬へ代入すると、以下のようになる。

更に、1次の第1種ベッセル関数を適用すると、以下が成り立つ。

(2)-⑯を(2)-⑮へ代入すると、以下のようになる。

ここで、波長をλ、xy平面の原点からの距離をqとおくと、以下の関係がある。

これを(2)-⑰へ代入すると以下のようになる。

更に、開口数をNA、開口径をSとすると、以下の関係がある。

これを(2)-⑲へ代入すると、以下のようになる。

よって、観測される強度は以下のようになる。

中心強度をI0とすると、I0は以下のようにして得られる。

即ち、強度は開口部の面積の二乗に比例し、開口から観察面までの距離の二乗に反比例する。
強度分布を中心強度I0で規格化すると、以下の関係が得られる。

1次1種ベッセル関数を含む(2)-㉔は数学的に既知の関数形であり、光学ではエアリーパターンと呼ばれる。グラフで表すと以下のようになる。

この関数は、グラフ中に示してある横軸の値(±3.8317, ±7.0156, ±10.1735, ±13.3268)において、縦軸(即ち強度)が零になるという特徴をもつ。ここから更に、横軸のスケールを (2πNA/λ)・q から q に変換すると、以下のようになる。

中心から第1暗環までの距離をqRLとし、このqRLをエアリーディスク半径、それより内側に存在する明るい領域をエアリーディスクと呼ぶ。qRLは以下のように表される。

今、距離 d だけ離れた強度の同じ2 つのエアリーパターンの重ね合わせをUi(q)とし、次のように表すこととする。

ここで、ξ は2つのスポット間の位相差である。この観測される強度は以下のようになる。

位相差 ξ が π の奇数倍となる場合、 q=0 において cos(ξ)=−1 となるため、干渉項(第3項)が最大の負値となり、 2つの点像の強度が互いに打ち消し合う。 その結果、q=0ではUi(r) は零となり、2点の分離に対するコントラストを極めて大きくできる。 この原理は半導体リソグラフィなどで利用されており、位相がこのように揃う状態は、 そのようになるよう意図的に設計された光学系でのみ実現される。
一方、通常のインコヒーレント光によるイメージングでは位相 ξ はランダムであり、 コヒーレント光を用いる場合でも一般には走査しながら観測するため、 同一時刻に位相が揃うことはない。 そのため干渉項(第3項)は寄与せず消滅する。 このときの強度を Ur(q) とすると、以下のように表される。

スポット間の距離 d がエアリーディスク半径 qRL=0.61λ/NAに等しい場合について、(2)-㉘をグラフで示すと、以下のように、中央の谷の深さはピーク強度の約 0.26 まで落ち込んでいる。

2 つのスポットがエアリーディスク半径だけ離れたこの状態を、レイリー分解能と定義する。この条件は、光学系が2点を分離して識別できる限界を示す指針として広く用いられている。
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関連文献
[A] Goodman, J. W., Introduction to Fourier Optics, 3rd ed., Roberts & Company, 2005.
[B] Born, M. & Wolf, E., Principles of Optics, 7th ed., Cambridge University Press, 1999.
[C] 佐藤・中島『フーリエ光学』朝倉書店, 2002.
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2026-09 新規公開
